オックー@漢方(中医学)+鍼灸

薬剤師・鍼灸師・国際中医師A級のオックーが基本、中医学について書いています。

肝の不調とは脳の防衛本能(肝鬱)

chinese-medicine.hateblo.jp

 でも書かせてもらいましたが

肝の不調とは脳の防衛本能と考えると理解しやすい部分が多くあります。

 

怒りやすくなったりイライラする

これは

五神・五志とは(魂・神・意・魄・志)

に書いたように怒りが肝に割り当てられているのですが

本来怒りとは図星を指されたりして、不利な状態から自分を防衛するために起こる感情

ですね。

肝の性質上外向きに攻撃する感情であると言えます。

 

怒ったり、焦ったり、色々なことに集中したりすると顔が赤くなったり、血圧が上がったりする人がいますがこれを中医学では肝陽上亢や肝火上炎と言います。

肝陽上亢や肝火上炎の違いはあなたの不調はストレス?を読んでいただければ分かりやすいと思います。

これらの状態では脳がフル回転している状態ですから脳が大量の栄養、酸素を要求していると言えますですので血圧を上げたりしてその足りない部分を補おうとしていると考えると分かりやすい。

 

また肝は脾と相剋の関係にあり

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五行図

肝に問題がある脾も弱らせてしまうといった関係にあります。

また脾・胃は表裏の関係にありますので影響が波及します。

前述のように脳がフル回転ますと脳が大量の栄養、酸素を要求しますから

胃腸にその分の栄養を要求します。

そうすると胃腸が受け止められないくらいの食欲が湧きおこります。

そうすると本来の機能を果たせない胃腸は気血ではなくは痰湿を生み出してしまいます。

また脳の過剰の要求に胃腸が耐えられなくなってしまうと下痢を起こしてしまったりします。

便秘に関しても胃腸の機能不全だと解釈していたのですが最近

 

とのツイートを見かけ

もしかしたら人類がまだ食べ物を食べるのに苦労しており飢餓が身近だったころの栄養を確保するための正常な反応と捉えることが出来るかもと考えました。

もちろん長時間、腸に飲食物が停滞すると異常発酵などの問題もあるので諸刃の剣ですが、現代人の場合は問題なく食べれるのでよりその問題が顕著になりますね。

ですのでストレスでの便秘は

胃腸の正常な機能としての実な便秘と

胃腸の機能不全での虚な便秘

があると考え治療の幅を広げたいものだと思った次第です。

 

また肺と肝も相剋の関係にあり肝の影響を肺は受けやすく

部位的にも肝の上に肺があり肝の熱が肺にも影響を与えやすい

 

これも脳の防衛反応として考えると

ウイルスや細菌の侵入を感知した脳は免疫力を上げようとセットポイントを上げますが

その命令が過剰であると高温になり過ぎて身体が疲弊してしまいます。

地竜*1などの生薬が高熱を抑えてくれるのはこのような脳の過剰反応を抑えてくれるからと考えています。

 

脳が大量の酸素を要求するとそれを賄おうとして浅く早い呼吸になってしまったりもします。

 

これらの肝(脳)の過剰要求に対しての対応はまずは脳への負担を減らすとともに

要求を受けた臓に無理をさせないことも大切

養生として出来るのは

胃腸としてはしっかりよく噛んで胃腸に負担にならない食事をとる

肺として出来るのはいったん気を落ち着かせ深呼吸をする

などです。

本能に振り回されない養生を心掛けたいものですね。

 

*1:ミミズを乾燥させたもの、脳梗塞の後遺症などの神経回復にも有効