自律神経失調症時に長期内服できる漢方薬は?
【漢方.jp】自律神経失調症時に長期内服できる漢方薬は?【新見正則が解説】
ここから書くのは漢方には様々な考えがあるので、私なりの考えとみていただければ幸いです。
私の考えではこの動画は突っ込みどころが満載で、こういったことによって漢方が効かないと思われてしまってはとても悲しいので書かせていただきます。
そもそも長期飲み続けて良い漢方なんてないっていうのが私の基本的考えです。
漢方とは身体のバランスを整えていくのが基本ですので、体の状態が変わってくれば当然薬も変えていかなければいけないわけです。
また更年期障害などで数年も飲ませれば漢方が効かなくても自然と治っている可能性すらあるのです。
自律神経失調であったり更年期障害という病名だけで一つの漢方薬を選ぶこと自身が問題でもあります。
ではこの動画で出てくる加味逍遥散とはどのような漢方か説明させていただければ漫然とこの漢方薬を使い続けることの危険性がわかるかと思います。
加味逍遥散とは特に肝*1と脾*2にアプローチをする漢方薬で、胃腸機能を高める生薬と肝血を補う生薬、そして気の巡りを良くする生薬が一緒になっており
さらに肝の気の巡りが悪くなったことによって起こった熱を取る生薬が入っています。
この構成から考えると気の巡りが悪くてもそこまで熱になっていない場合は熱を取りすぎてしまうリスクがありますし
気の巡りを良くする作用も結構強いので巡りすぎることによって疲れてしまうような人には適しません
また肝血を補う生薬は胃腸の負担になってしまうこともあるので脾が極端に弱い人の場合には適しません
こういった感じで自律神経失調の方でも合わない人はかなりいる漢方薬だと分かるかと思います。
以前にいらっしゃった患者様で
若い時にとてもストレスがありイライラしたりした時に加味逍遥散を飲んでとても良くなったが
このところまたイライラが広いので加味逍遥散を飲んだが良くならないので来たという方がいらっしゃいました。
これは同じイライラでも体質が変わったので加味逍遥散が効かなくなったのが分かるかと思います。
この形の食の好みを聞いたところ若い時は激辛がとても好きだったが、今は辛いものがとても苦手になってしまったとおっしゃっていました。
辛い食べ物は発散をする力があるので気の巡りをよくしてよくしてくれますので外から受けるストレスの大きな時にはとても有効です。
ですが潤いも消耗してしまうので肝血不足などの方の場合は辛いものが苦手だったりします。
肝血が不足してしまうと気の巡りをコントロールするのがうまくいかなくなるので少しのことでイライラしてしまったりします。
ですのでこの方の場合は、若い時は強いストレスを受けていたのを激辛で回すのがよかったが
現在のイライラは強いストレスを受けているわけではなく、むしろ体の潤いがなくなってしまったためによるストレスを受け止める力の低下と考えられるのです
こういった形の場合に加味逍遥散のようにめぐりを良くすることに重点を置いた漢方薬を使うとより消耗してしまってより悪化する恐れがあります。
こういった場合は肝血などの潤いを重視した漢方薬に切り替えて言った方が良いのが分かるかと思います。
よく使われるのが抑肝散であったり釣藤散、七物降下湯、杞菊地黄丸などであったりします。
その人の胃腸の強さ、肝血不足と気の巡りの悪さのバランスなどを考えて選んで行く必要があります。
また加味逍遥散のように気の巡りを重視した漢方薬はぴったり合った時にはとても効果が出るのが早く良くなったとすぐに患者様が言ってくれたりします。
もちろん強いストレスに常にさらされていたりすると、それによる悪化もありますので完全に治るのはなかなか難しいこともあります。
ですが漢方薬を使いつつうまくストレスを発散する方法を見つけるや食養生・運動などを取り入れると完治することは多くあります。
肝血不足などが中心の自律神経失調の場合は年齢などにより肝血が消耗していることもあるので継続して飲まざるえない場合もあります。
ですが気の巡りの方の問題が落ち着いてくればより肝血を補う方を増やしていったりすることもできます。
ですのでやはり、そのステージごとでの漢方はやはり使い分けていくことになります。
これが中医学の最も大事な理念である標治・本治の考えです。