オックー@漢方(中医学)+鍼灸

薬剤師・鍼灸師・国際中医師A級のオックーが基本、中医学について書いています。

少陰腎経の流注について

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少陰腎経は足の小指から始まり(小指の外側には膀胱経の至陰)

足裏の窪み湧泉に斜行しそこから内踝を周りその後、上に

また途中に三陰交で厥陰肝経・太陰脾経・少陰腎経と足を通る陰経が全て交わります。

その後尾骨の先端の長強へ至り督脈と交会し脊柱を貫いて腰に至り腎に属して膀胱に絡しますが

これは腎が髄を作るとの考えとも繋がりますね

また別枝は長強から会陰に会陰は任脈のツボであり

任脈は少陰腎経と共に生殖に大きく関わるところあり納得ですね

仙骨神経が排尿などに大きく関わっているのもこの流れが示していると考えられますね

会陰からは体表の横骨に繋がり兪府に至ります

途中、任脈の中極・関元とも交会します。

それとは別に腎から身体の内側を上昇して肝・隔膜を貫いて肺に入り喉を通り

舌の根元へ

こちらで書いたようにネバネバの唾液の分泌に関わります。

また腎は納気に関わり特に吸気に影響します

ですので腎の不調は喘息などにもつながるのですが

喘息の問題は気管の収縮と炎症これにも腎が関係しているのが分かりますね。

また肺に入ったところで一部は心に絡して厥陰心包経と交わります。 

 

 

太陰脾経の流注について

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 太陰脾経は足の親指の親指側の隠白から始まります

ちなみに厥陰肝経は親指の小指側の太敦より始まり

脾と肝の経絡のバランスが悪いと外反母趾の原因となったりします

脾は気血を作り出す臓で筋腱自体を作るのにも関わり

肝は筋肉の動きのコントロール臓腑のバランスと見ても影響が考えられる部分です。

また太陰脾経は足の内股側を通っていますので、内転筋との関わりも深く脾が弱い人は座る時

大股開きになったり足を組んでいないと落ち着かないこともあります。

内転筋に限らず脾の不調は日頃あまり鍛えることのない筋肉に影響を表しやすいです。

 

chinese-medicine.hateblo.jp

 

さらに4の三陰交で厥陰肝経・太陰脾経・少陰腎経と足を通る陰経が全て交わります。

さらに足を上がり腹壁を登ってその途中任脈の中極・関元と交会して腹哀からお腹の中に入ると考えるので

お腹の筋肉の充実なども脾の状態の確認に有効ですね

そこから脾に属し胃を絡しますそこで任脈の下脘とも交会さらに胃から心へつながる経路と

腹哀からそのまま外側を上に上がる経路に分かれ

途中、少陽胆経の日月→厥陰肝経の期門→食竇

脇の前の周栄で後方の下(脇下)の大包へ

大包は脾の大絡と言われ全身へ気血を送る働きがあると考えられています

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この脾が全ての臓腑の中心との考えにつながるツボでもありますね

解剖学的には肝臓(西洋医学)の肝静脈や門脈に影響するツボと考えると作用と場所から推測出来ます。

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さらにそこから上に上がり太陰肺経の中府から身体の中に入ります

脾と肺は親子関係で

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その繋がりも表しているかも知れませんし

中府は太陰肺経が内側から出る部分で重なっており面白いところですね

脾と肺は協力して気血を作りますしね

そこからは体の内側を通り喉→舌に

脾は味覚などにも大きく関わっているのが分かりますね

コロナなどの感染症で味覚に影響が出るのもこの脾・肺の関係を疑う必要があるかもしれません。

五行の中の陰陽について

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五行の中には多くの陰陽が隠れています

まず真っ先に思いつくのが、五臓の表裏関係にある六腑ではないでしょうか

陰↔陽

肝↔胆

心↔小腸

心包↔三焦

脾↔胃

肺↔大腸

腎↔膀胱

これは

臓はものを蔵す機能がありより身体の深部なので陰

腑はものを通す機能があり身体の表面に働くので陽

といったもの

さらには五臓実体にも気血といった陰陽があります

また

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また臓腑の位置関係での陰陽

陰↔陽

下にある腎↔上にある心

右にある肺↔左にある肝

もありますこの配置での位置に関しては臓腑の機能を表した配置です

実際の身体の中での位置で考えると

下にある肝↔上にある肺

となり肺・肝の陰陽関係は逆転します

陰陽は何を基準にするかで意味が変わる部分ですね

さらに

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相生

相生の関係は臓の陰な側面を表しています

陰とは物を生み出す力があるものと考えるからです

この場合、肺の陰がマスクで守られそれにより腎の陰も充実するとの考えになります

更に腎精が充実すると肝血も充実

肝血が充実すると心血も充実

心血が充実すると脾気が充実

脾気が充実すると肺陰・肺気が充実

相剋

相剋の関係は臓の陽な側面を表しています

陽は陰をコントロールすると考えるからです

肺の気を巡らせる機能の不調は肝の気を巡らせる機能も低下させその逆もしかり

 

肝の気を巡らせる機能の不調は脾の働きを低下させ

脾の働きが低下すると肝血が作り出せないので肝の機能も低下します

 

脾が余分な痰湿を作ると腎の機能が低下し

腎の痰湿を排出する機能が低下すると痰湿により脾は弱ります

 

腎が痰湿を排出、出来ないと心が弱り

心の機能が強すぎる(高血圧など)と腎が弱ります

 

 

 




 

 

厥陰心包経の流注について

厥陰心包経の流注について書こうかと思います

五臓六腑の流注についてしか聞いたことの無い方には心包?

となるかもしれません

経絡は十二正経と言いまして

五臓六腑に心包という臓が足された六臓六腑に

それぞれの経絡が関係していると考えるのです

 

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これが厥陰心包経の流れですが

 少陰心経と似てるなと思う方も多いと思います

それもそのはず心包とは心臓の周りにあり心臓を守るための存在としての臓器と考えられているからです。 

そこからの上下の動きが違うのが分かると思います。

心という臓器は神明をつかさどると考えますから

人間の思考の中心である脳の方やそれが強く反映される目の部分に繋がっているのですが

心包の方は繋がっていないのが分かるかと思います

また下の方へにはどちらの経絡もつながっていますが心の方が小腸に繋がっていると考えるのに対して心包の方は体の上焦・中焦・下焦に流れていくと考えます。 

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ですので患者様の体調不良を考えた時に心臓のポンプ機能としての不調を強く感じた場合は心包経へのアプローチを多く行うことが私は多いです。

ここにも書いたように心の君火を心包が相火として受け取り三焦を通して命門の火として蓄えるという考えにも繋がります。

さらに面白いのは手のひらの部分でのツボを見ると労宮・中衝とつながり脈の拍動部と合致するのです。

これら部分からも心臓のポンプ機能と大きく関わっているのは明白です。

また内側から出てきて最初の天池で少陽胆経で交会します

また内関は陰維脈に通じているので陰維脈の病である心痛・胃痛・反胃・結胸・胸脘部の満悶と痞脹・腹中の結塊・脇痛・脇下支満・瘧疾などを治療することが出来ます。

少陰心経の流注について

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心は血脈を主ると言われるように

動脈・静脈の走行と少陰心経の流注が類似しているのが分かるかと思います。

下行大動脈→腹腔動脈→消化器官

とのつながりを少陰心経→太陽小腸経のつながりと考えたのかもしれません

この動脈によって供給される血液によって消化吸収機能は維持されているので

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脾(胃腸機能)は心の子供であるとの相生の考えも納得ですね

また

下行大動脈→左右腎動脈→左右腎臓

とのとても太い動脈での心腎のつながりは心腎交通を連想させますし

そこからさらに大きな上半身と下半身のバランスとして古代の人は観察していったのではと考察出来ます。

心・腎の相剋の関係ですね

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位置関係としてはこちらの五行図の方が理解しやすいですね

また心から目につながる経路も動脈静脈の経路として考えることも出来ますし

心は神明を主ると考えますから

目の輝きなどで神明の状態を確認したりする中医学の考えからも

心から目につながっているのは自然な流れだと思います。

また小指の少衝で終わるのも面白く

心臓に不調が有るとき左手の小指に放散痛を感じることが多いのも古代の人が知っていたのではと思われます。

感覚として感じるということは

小指に鍼灸の刺激→脳→心臓

とのつながりで鍼灸刺激が心臓に良い働きをするとも考えられます

 

 

厥陰肝経の流注について

泣きすぎて頭が痛くなったって経験はないですか?

泣くということは感情が高ぶっていると言えるのですが

これは感動するや怒りや悲しみなど様々な感情によって引き起こされます。

全ての場合に共通するのは大きく感情がどちらかに振れるということです。

中医学では感情が激しく揺れ動きすぎないようにしている臓腑は肝だと考えられています。

ですので厥陰肝経と言う経絡の流れを見てみると面白いことがわかります。

下から上がってきた経絡の流れは目の部分を通り前額部を通り頭のてっぺんにある百会というところで督脈という経絡と合流します。

人は泣くと目から涙を流し目が充血したりします。

これは厥陰肝経が目の部分を通っていることからも説明がつきますし

肝は肝は目に開竅(かいきょう)するとは、

この経絡のつながりと肝血が目を滋養することから来ている言葉でもあるから当然とも言えます。

また肝の液は涙であると言われます

 

さらに頭痛がする場所は目頭から前額部から頭頂部にかけての場合が多いと思うのです。

これも経絡の流れに沿っていて納得のできる部分ですね。

さらには鼻の奥にも経絡がつながっており

泣き過ぎると鼻水出るのもそのため

また肝胆湿熱と呼ばれる状態になると副鼻腔炎の原因になったりします。

昔の人は感情が高ぶった時のこのような反応を観察した上で厥陰肝経の経絡の流れを決めたのではないのかなと思う次第です。

なぜこうなるのかと現代医学的に考察すると感情が高ぶることによって呼吸が浅くなり脳が酸欠に近い状態になるのも一つの原因なのかなと思いますし、脳が過剰反応を起こすことによってオーバーヒートする部分もあるのかと考えられます。

中医学で言う肝とは現代医学でいうところの脳の感情であったり、本能的な行動や脳自体が脳を防衛するために起こす過剰反応などを指していると考えられるからです。

本能的な部分に関わるというところで面白いと思うのは厥陰肝経は生殖器の部分も通っていることです。

性欲なども最も基本的な本能に近い部分ですから肝が関わっていると昔の人は考えたのではないでしょうか。

さらに強いストレスで陰嚢などに痛みを感じる人もいますし

肝胆湿熱でカンジダ膣炎や黄色いオリモノが出たりするのもこのため

また厥陰肝経は横隔膜の部分も通っていると考えられています。

人はストレスを強く感じると胸脇苦満と言ってこの部分にハリ感や違和感を感じることが多くあるので昔の人はここにも厥陰肝経が通っていると考えたのだと思われます。

現代医学的にはこの部分は迷走神経と言う脳神経が大きく関わっているのがわかっていますのでこれまで話した内容にも合致するのが分かるかと思います。 

さらには迷走神経は喉の部分の知覚にも影響しており厥陰肝経は喉嚨に沿って上に上がっていると考えられているところも肝に問題がある時に梅核気などを起こすことと繋がると考えられます。 

Bスポット療法などで喉にアプローチすることで様々な不調に有効だと聞くのもこの肝とのつながりもあるのかもしれませんね。

また迷走神経は内臓の筋肉の動きであったり消化液の分泌にも影響している神経でして

中医学では内臓の筋肉の動きであったり消化液の分泌を脾と考え脾の働きのコントロールに肝が関係していると考えているのは面白いところです。 

また涙の分泌に関わる脳神経は顔面神経で焦点の調整などは動眼神経

中医学での肝の働きに関わるのが中脳・橋・延髄などと重なるのも面白いですね。

どうしても経絡と言うと表面に見える部分のツボ同士のつながりと考えがちですが

目には見えない内側の部分にも繋がっているというのを理解するのに役立てばと考えています。 

また目に見えるツボとしては三陰交が厥陰肝経・太陰脾経・少陰腎経と足を通る陰経が全て交わる場所であり重要なツボとなります。

また太陰脾経とは衝門・府舎でも交会します。

任脈とも曲骨⑦・中極・関元⑨とも交会します。

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痰湿の陰陽について

これはよく鍼灸師の国家試験などでも出されるタイプの問題なので多くの方が正解したのでは無いでしょうか

痰湿は身体に良くないものですから邪なのは間違い無いですし

要らない体液や巡っていない体液のことで

下半身に影響が出やすいですし、一度出来ると症状の治りも悪く、気機の運行を阻滞し陽を損傷しやすいのなど陰の性質が多いです

ですから痰湿は陰性の邪だと言えます。

次の2つの問題はまず鍼灸師の国家試験では出ないタイプの問題です。

まず正邪と言う部分では

正とは人の身体にとって必要なもの

邪とは人の身体にとって要らないものや上手く機能しないで詰まったもの

なので痰湿はまず邪なのは間違いありません

ですが陰陽に関してはどちらが必要なものどちらが不要なものとの概念はありません。

さらには何を基準にするかによって陰陽が変わってくるのです。

 痰湿と津液を人に与える良い反応の部分を考え

といった場合は人にとって良い働きが多いものはしっかり機能している津液の方となります。

痰湿と津液を人に与える悪い反応の部分を考え

といった場合は人にとって悪い働きが多いものはしっかり機能しいない痰湿の方となります。

そして陰陽の違いとは

陽は機能・動き・熱

陰は物質・動かない・冷え

となりますので働きが多いほうが陽となります。

そうすると

痰湿と津液を人に与える良い反応の部分を考え

これは津液の方が人への働きが大きいので陽となり痰湿は相対的に陰となりますね

ですので答えは「邪で陰」

痰湿と津液を人に与える悪い反応の部分を考え

これは痰湿の方が人へ悪い働きが大きいので陽となり津液は相対的に陰となりますね

 ですので答えは「邪で陽」

 となります。

 

言葉遊びのように感じられる方も多いかもしれませんが

例えばガンや腫瘍などの原因は瘀血や痰湿といった陰性の邪が原因と言われますが症状が進行してくると様々な不調を引き起こします

これはガンや腫瘍が引き起こす身体に悪い働き(陽)のため

ガンや腫瘍を陰性の邪なのか?陽性の邪なのか?

などと言うこともありますが結局どの部分指しているかによって陰陽は変わってしまうとのことです。

 

また正邪に関して例えをかうと

肌の潤いがなく津液や血を増やしたいとすると

それを求めている臓である肺・肝にとってそれを補う生薬は正になりますが

それを補うためにキャパオーバーの生薬などを投入されれば

それを受け止める脾に取っては邪になります。

 

こういった様に常にどの部分を切り取って考えているのかのトレーニングとして

陰陽を意識してみるのは如何でしょうか?