厥陰肝経の流注について
泣きすぎて頭が痛くなったって経験はないですか?
泣くということは感情が高ぶっていると言えるのですが
これは感動するや怒りや悲しみなど様々な感情によって引き起こされます。
全ての場合に共通するのは大きく感情がどちらかに振れるということです。
中医学では感情が激しく揺れ動きすぎないようにしている臓腑は肝だと考えられています。
ですので厥陰肝経と言う経絡の流れを見てみると面白いことがわかります。
下から上がってきた経絡の流れは目の部分を通り前額部を通り頭のてっぺんにある百会というところで督脈という経絡と合流します。
人は泣くと目から涙を流し目が充血したりします。
これは厥陰肝経が目の部分を通っていることからも説明がつきますし
肝は肝は目に開竅(かいきょう)するとは、
この経絡のつながりと肝血が目を滋養することから来ている言葉でもあるから当然とも言えます。
また肝の液は涙であると言われます
さらに頭痛がする場所は目頭から前額部から頭頂部にかけての場合が多いと思うのです。
これも経絡の流れに沿っていて納得のできる部分ですね。
さらには鼻の奥にも経絡がつながっており
泣き過ぎると鼻水出るのもそのため
また肝胆湿熱と呼ばれる状態になると副鼻腔炎の原因になったりします。
昔の人は感情が高ぶった時のこのような反応を観察した上で厥陰肝経の経絡の流れを決めたのではないのかなと思う次第です。
なぜこうなるのかと現代医学的に考察すると感情が高ぶることによって呼吸が浅くなり脳が酸欠に近い状態になるのも一つの原因なのかなと思いますし、脳が過剰反応を起こすことによってオーバーヒートする部分もあるのかと考えられます。
中医学で言う肝とは現代医学でいうところの脳の感情であったり、本能的な行動や脳自体が脳を防衛するために起こす過剰反応などを指していると考えられるからです。
本能的な部分に関わるというところで面白いと思うのは厥陰肝経は生殖器の部分も通っていることです。
性欲なども最も基本的な本能に近い部分ですから肝が関わっていると昔の人は考えたのではないでしょうか。
さらに強いストレスで陰嚢などに痛みを感じる人もいますし
肝胆湿熱でカンジダ膣炎や黄色いオリモノが出たりするのもこのため
また厥陰肝経は横隔膜の部分も通っていると考えられています。
人はストレスを強く感じると胸脇苦満と言ってこの部分にハリ感や違和感を感じることが多くあるので昔の人はここにも厥陰肝経が通っていると考えたのだと思われます。
現代医学的にはこの部分は迷走神経と言う脳神経が大きく関わっているのがわかっていますのでこれまで話した内容にも合致するのが分かるかと思います。
さらには迷走神経は喉の部分の知覚にも影響しており厥陰肝経は喉嚨に沿って上に上がっていると考えられているところも肝に問題がある時に梅核気などを起こすことと繋がると考えられます。
Bスポット療法などで喉にアプローチすることで様々な不調に有効だと聞くのもこの肝とのつながりもあるのかもしれませんね。
また迷走神経は内臓の筋肉の動きであったり消化液の分泌にも影響している神経でして
中医学では内臓の筋肉の動きであったり消化液の分泌を脾と考え脾の働きのコントロールに肝が関係していると考えているのは面白いところです。
また涙の分泌に関わる脳神経は顔面神経で焦点の調整などは動眼神経
中医学での肝の働きに関わるのが中脳・橋・延髄などと重なるのも面白いですね。
どうしても経絡と言うと表面に見える部分のツボ同士のつながりと考えがちですが
目には見えない内側の部分にも繋がっているというのを理解するのに役立てばと考えています。
また目に見えるツボとしては三陰交が厥陰肝経・太陰脾経・少陰腎経と足を通る陰経が全て交わる場所であり重要なツボとなります。
また太陰脾経とは衝門・府舎でも交会します。
任脈とも曲骨⑦・中極・関元⑨とも交会します。