オックー@漢方(中医学)+鍼灸

薬剤師・鍼灸師・国際中医師A級のオックーが基本、中医学について書いています。

舌診の苔とは

舌診と呼ばれる診断方法において理想的な苔は

白薄苔と呼ばれ白くうっすらと苔が生えている状態だと言われます。

舌の表面には舌乳頭と呼ばれる無数の突起があります。

これが正常に生えている状態が白薄苔と言えるのです。

ですのでこの苔が全く生えていないような状態を鏡面舌

部分的にハゲてしまっているような状態を地図状舌

と呼んだりします。

本来の構造物が作れていない状態ですので原料になる栄養素などが足りないもしくは栄養が舌に届いていないと考えられます。

中医学で言うと地図状舌のような状態の場合は胃の気陰両虚、 さらに状態が進んだ鏡面舌などは腎の潤いまで消耗してしまっていると考え胃腎の気陰両虚と考えます。

 

ただ舌の苔には舌乳頭のように必要な構造物でない苔もあります。

舌に付着しているタイプの苔です。

口腔内で繁殖した雑菌やタンパク質の汚れですね。

西洋医学的には口腔内で繁殖した雑菌やタンパク質の汚れは唾液の分泌不足などにより口腔内が清浄に保てなるからと考えられています。

中医学では必要な構造物としての苔はこすっても簡単には取れませんので有根苔

こすったら簡単に取れてしまう苔を無根苔と言って区別し有根苔の人は病気の予後などが良いと考えます。

基本的には必要な構造物の苔の上にさらに汚れのような苔が付くわけですから

必要な構造物の苔が無い部分には苔がつきにくく全体的には苔が多いか部分的にハゲているような状態になることも多いです。

 

中医学的にも舌の潤いをチェックすることは大切で舌の表面が乾いてしまっているような状態を燥苔と言います。

表面は乾いているが苔は多いような状態ですね。

熱邪や燥邪により潤いが消耗している場合や陽虚がひどく水分代謝が悪くなり唾液が出せなくなっている可能性が有ると考えます。

もちろん潤いが消耗している状態が長期続けば 最初にお話しした地図状舌や鏡面舌へ進展していくこともあります。

 

また口は乾いていないが苔がべったりついている人もいます。

こんな場合中医学では痰湿が多いや病邪が体の奥に入り込んでいると考えたりします。 

口腔内に唾液が出ているんだから西洋医学的な説明では矛盾を感じてしまうところがあるのですが、

中医学でいう痰湿とはうまく巡っていない体液や正常に機能していない体液のことを指しますので、唾液は出ているが唾液に含まれている成分がしっかり口腔内を清浄化することができるようなものではない可能性があるのかもしれません。

また寝ているときの唾液分泌や口腔内の乾燥が影響している可能性もあります。

こういった人は口の粘りを訴えたり口の渇きが気になるという人も多いのも特徴です。

 

私もたまに口を開けて寝てしまった次の日は口が乾いているなと感じるのですが

そんなときの舌の苔は濃くなっており部分的に剥げていることが多いです。

これは口を開けて寝た事による口腔内の乾燥がまず苔が濃くなったと考えられますが

苔が濃くなるのを中医学で考えると痰湿などの阻滞や病邪が奥に入った状態と考えます

病邪が奥に入ると三焦を阻滞するので痰湿と似た状況となるのは納得出来る部分です

またさらに病が進むと陰血不足が進み苔がはげてきます。

西洋医学中医学の共通点は?

西洋医学では鼻の詰まりなどで口を開けている

中医学では津液の巡りを担っている臓器は肺と考えますからそこの不調と考えると痰湿も考えられますし、痰湿があるため鼻腔が腫れ鼻が詰まっているとも考えられますね。

苔が剥げているのは本来の舌乳頭が育てられていないので胃腸の不調と考えられ

胃腸(脾)の不調は痰湿も作り出すので鼻の詰まりとも繋がりますね。

また歯痕の話しでも書いたように舌の筋力が落ちると舌が下顎についてしまい鼻呼吸がしにくくなります。

 そうすると寝ている時の口呼吸のリスクも高まり

口腔の乾燥のため苔が厚くなる可能性があります。

 

 鍼灸の治療で膀胱経・腎経などにアプローチするとイビキに良いことが多いのも

痰湿との関わりが大きいからと考えられます。

ここに書いたように脾→肺→腎の津液の流れを意識したいものです。

 

また苔の色も診断の基準と考えます。

黄色い苔の場合は基本的には熱や湿熱といったものが体にあると考え

黒や灰色の苔の場合はより強い熱や強い冷えがある場合や病が長期化した場合に出ると考えられます。

もしかしたら腸内の炎症の状態などが反映されているのかもしれません。

人間の目で唯一目視できる腸腔内ですしね

さらに口の中が苦いと感じる人は胆汁が逆流していることもあり、それにより着色していることもあると考えられます胆汁の色は黄色いのでその可能性は高いと考えられます。また胆汁は酸性よりだと黄色、アルカリ性よりだと黒くなります。